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「九月の四分の一」大崎善生著 [本]

4編の物語が収められた短編集です。
大崎さんの作風を何と表現して良いのか分かりませんが、私は「真摯な」と言うことにしています。「登場人物の感情にズカズカと土足で踏み込まない」と言うと分かりやすいでしょうか。もっと分からなくなったでしょうか。

どれも『僕』が主人公の1人称で語られる作品であり、人生には節目がある、という事を感じさせてくれる作品ばかりです。どの作品も、とても趣がありますが、私は2作目の「ケンジントンに捧げる花束」が一番気に入りました。
物語には、年月を経て角が取れて丸くなったような印象が、しっかりと刻まれています。

主人公は、将棋雑誌の編集長を10年間勤めた『僕』です。10年を一区切りと考えていた『僕』は、編集長を辞めると共に編集社も去ることにしたのです。
そんな彼にイギリスから1通の手紙が届きます。差出人は、日本人の夫をひと月前に亡くした、老女からでした。彼女の夫は、10年前から『僕』の編集する将棋雑誌を定期購読し、配達日を心から楽しみにしている人でした。50年以上も前に日本を捨てた老人が、唯一捨てられなかったものが、将棋だったというのです。
『僕』は、いままでの自分の仕事にけりをつけるために、そして自分自身そのものを探すために、イギリスに旅立ちます。

イギリスに住み、90歳で亡くなったその老人と、編集社を辞める『僕』との、2人の青春の終焉が物語の主題です。老人が将棋雑誌に求めたものと、『僕』が老人に求めたものは、結局のところ同じではなかったのだろうか、と思えて仕方がありません。


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